MLBの殿堂入りと聞くと、通算成績やタイトル数だけで決まると思われがちです。しかし実際には、実働年数や得票率といった明確なルールに加え、記者による評価や再評価の仕組みなど、複数の要素が結果を左右します。

本記事では、MLB殿堂入りの条件から投票の流れ、2026年候補を読むポイントまで順番に解説していきます。

MLB殿堂入りの条件が評価する範囲

MLBの殿堂入りは、ニューヨーク州クーパーズタウンにある野球殿堂博物館に、その選手の功績が恒久的に展示される制度です。

永久欠番やMVPなどが球団ごと、あるいは単年シーズンでの評価であるのに対して、殿堂入りはキャリア全体の実績とMLB全体への影響を総合的に見ます。

選出はBBWAA(全米野球記者協会)による記者投票と、Era Committees(時代別委員会)による選出が柱となっており、主に記者投票の結果が毎年1月に発表されます。

MLB殿堂入りの条件は?資格と当選の二段階

MLB殿堂入りの条件は、活躍年数や得票率が明確に定められた公式制度です。ただし、「候補になれる資格」と「実際に選ばれる基準」は別々に設定されており、この二段階を理解することが大切です。

こちらでは、実働年数・引退からの年数・得票率といった数値ルールを確認していきましょう。

実働10年と引退後5年の待機期間

候補になるための前提条件は、MLBで10シーズン以上プレーしていることです。この「実働10年」はメジャーリーグの公式シーズンでの在籍年数と定義されており、短期間で突出した成績を残したとしても免除されることはありません。

さらに、引退後5年以上の待機期間が必要とされます。例えばコール・ハメルズは2020年が最終登板のため、2026年から初めて投票対象となります。投票対象期間は引退から15年以内と決められています。

記者の75%以上から支持が必要

殿堂入りするには、投票権を持つ記者の75%以上から支持を得なければなりません。2025年の投票では総数394票のうち296票以上が当選ラインとなり、このラインを超えられずに落選した有力候補も少なくありませんでした。

この厳しい水準に満票で到達した唯一の例が、2019年に全票一致で選出されたマリアーノ・リベラです。イチローも2025年に得票率99.7%という高得票で選出されました。

参考サイト:MLB公式サイト

MLB殿堂入りの条件を満たしても投票で落選する理由

MLB殿堂入りの条件を満たしていても、投票の仕組み次第で結果は大きく変わります。特に、誰が投票しているのか、どのようなルールで票が集計されるのかを理解しておくと、得票率の意味がつかみやすくなります。

こちらでは、投票の主体となる組織と、候補発表から当落決定までのおおまかな流れを整理します。

BBWAA記者投票の特徴

BBWAAは、10年以上にわたりMLBを継続して取材してきた記者によって構成される団体です。投票権を持つのは一定条件を満たした現役会員と名誉会員で、投票は全員が無記名方式で行います。

名前が公表されないため、球団や選手からの直接的な圧力を受けにくい点が特徴です。評価の対象は成績だけではなく、以下のような多面的な要素が含まれます。

  • 打撃・投球・守備などのプレー成績
  • リーダーシップやチームへの貢献
  • スポーツマンシップや人格

5%未満で資格喪失!再評価の仕組み

殿堂入りは1回の投票で決着がつくとは限らず、複数年にわたって評価が続くケースも多くあります。得票率が75%に届かなくても5%以上を獲得していれば翌年以降も投票対象に残り、最長10年間は記者投票で再評価されます。

一方で、得票率が5%未満になるとその時点でBBWAAによる投票資格を失いますが、その後はEra Committeesによる再評価の仕組みが用意されています。

成績以外も評価される理由

MLBの殿堂入りは、通算本塁打数や勝利数といった数字だけで決まる制度ではありません。投票では選手としての実績に加え、チームやリーグ全体に与えた影響、さらには倫理面での行動まで含めて総合的に判断されます。

そのため、成績が突出しているにもかかわらず票が割れるケースもあり、数字だけでは測れない奥行きのある制度として機能しています。

倫理問題で落選した選手たち

象徴的な例がピート・ローズです。MLB歴代最多の4256安打を記録した一方で、野球賭博問題によって永久追放処分となり、現在も殿堂入りは認められていません。

出典:MLB51

バリー・ボンズやロジャー・クレメンスも、圧倒的な成績を残しながら薬物疑惑が重く見られ、記者投票では賛否が大きく分かれました。無記名投票では、投票者個々の倫理観や、その時代の社会的な空気も反映されます。

MLB殿堂入りの条件を満たした2026年候補者

2026年の殿堂入り候補となるBBWAAの投票用紙は、2025年11月17日に公開されました。この年は初年度候補が12人と多く、世代交代を印象づけるラインナップになっています。殿堂入りは資格を満たした選手が自動的に選ばれる仕組みではなく、各年の投票状況や他候補との比較によって当落が揺れ動きます。

ハメルズは初年度当選?2026年の注目候補

2026年の初年度候補で特に注目されるのが、左腕投手コール・ハメルズです。
通算163勝、オールスター選出4回、ワールドシリーズMVPといった実績を持ち、2026年が初めての投票年になります。

参考サイト:Reuters

一方で、投票用紙に残り続けている継続候補では、カルロス・ベルトランやアンドリュー・ジョーンズが高い得票率を維持しており、当選ラインにどこまで迫れるかが焦点です。

初年度の段階で75%に到達するタイプなのか、複数年かけて得票を積み重ねていくタイプなのかを見極めることが重要になります。

まとめ

MLB殿堂入りの条件は、候補資格と得票率という二段階で構成されており、両方をクリアして初めて選出されます。資格要件では実働年数と引退後の待機期間が、当選基準では記者からの高い支持率が求められる点が特徴です。

投票は記者による無記名方式で、得票結果次第で複数年評価が続く場合もあれば、資格を失う場合もあります。2026年は新規候補と継続候補が混在する年のため、それぞれの得票推移を見守ることが注目ポイントです。